賃借人が家賃を滞納したまま引っ越してしまった場合の対処法
賃借人が賃料の支払いを滞納したまま、借りている家から引っ越しをした場合、賃貸人としては、未払い分の賃料の支払い、遅延損害金の支払い(合意がある場合には、合意の利率に従い、合意がない場合には法定利率3パーセント)、賃貸借契約の解除と目的不動産の明渡しを要求することが考えられます。
このページでは、賃借人が賃料の支払いを滞納したまま引っ越しをした場合における、賃貸人の対処法についてご紹介いたします。
◆賃借人に対する支払いの督促
賃借人の引っ越し先がわかる場合や、連絡が可能な場合には、まず賃借人に未払いの賃料の支払いをするよう督促を行います。滞納理由や、支払いの意思(契約継続の意思)、支払期限を確認します。
もっとも、音信不通の場合には、賃借人に督促を行うことができません。そこで、以下の手段をとることになります。
◆連帯保証人に対する支払い督促
連帯保証人は、賃借人と同様の責任を負うため、連帯保証人に対しても金銭の支払いを求めることができます。
また、連帯保証人に、賃借人と連絡をとり、支払いを促してもらうことを依頼することが考えられます。今後支払う意思・賃貸借契約を継続させる意思があるのかを確認する必要があります。なぜなら、連帯保証人は賃貸人と保証契約を締結しているにすぎず、賃貸借契約を解除する権利を有しないからです。
賃料や遅延損害金について、賃借人に支払い能力がない場合には、連帯保証人に支払いを求めることになります。
◆内容証明郵便で支払い督促
賃料の支払いがない場合、内容証明郵便を用いて、賃料の支払いを督促する必要があります。
なぜなら、解除等の法的手段をとる場合、賃料が未払いであること、また、督促をいつおこなったかを証明する必要があるからです。
内容証明郵便とは、「誰が、誰に対して、どのような内容の郵便物を、いつ送ったか」を証明することができる郵便をいいます。
内容証明郵便は、相手の住所・氏名がわからなければ送ることができません。つまり、引っ越し先がわからなければ、内容証明を引っ越し先に郵便することができないことになります。
この点、通常、転出届・転入届の手続が行われており、住民票の取得によって転居先がわかるため、住所を知ることができます。
「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者」は「当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書(の)交付」を受けることができる(住民基本台帳法12条の3第1項)とされています。
そのほか、勤務先がわかっている場合、勤務先に送付することができます。
現住所も勤務先も判明しないような場合には、公示送達を行うことができる場合があります。
◆訴訟の提起
内容証明郵便で賃料の支払いを催促したにもかかわらず、賃料を支払わないような場合には、未払い賃料および、遅延損害金の支払い請求・建物の明け渡し請求を求めて訴訟を提起することが考えられます。
訴状の送達についても、上と同様の手段で行うことができます。
請求する金額が60万円以下の場合には、審理が1回で判決の言い渡しを受けることができる、少額訴訟を利用することができます。
◆やってはいけないこと
無断で室内に立ち入ることはできません。
住居権者である借主に断りなく部屋に立ち入ることは、住居侵入罪(刑法130条)に問われることがあります。
上記手続きを経て、適法に未払い賃金の支払い、明け渡しを受けましょう。
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