債権回収における仮差押えと仮処分の違い|手続きの流れも併せて解説
民事訴訟は相当程度の時間を費やすため、その間に権利実現が不能または著しく困難になるリスクを伴います。そこで、権利者の権利の実現を保護するための制度が必要となり、設けられたのが民事保全制度です。
このページでは、民事保全の内容である、仮差押え、仮処分の特徴と違い、手続きの流れをご紹介いたします。
◆仮差押え
・仮差押えとは
仮差押えは、「金銭債権」の実現を保全するため民事保全制度です。
仮差押えは、債務者の責任財産(不動産・動産・債権)を仮に差押えて、その処分権を剥奪することを目的とします。
仮差押えをうけると、責任財産の処分が禁止され、これに反する処分行為は、債権の実現である本執行との関係で、その効力が否定されます
◆仮処分
・仮処分とは
仮処分には、「係争物に関する仮処分」と、「仮の地位を定める仮処分」の2種類があります。
係争物に関する仮処分とは、「非金銭債権」の権利実現の保全を目的とする民事保全制度のことをいいます。
係争物に関する仮処分を受けると、係争物(訴訟において争いの目的となっている物)の占有の移転や、処分が禁止されます。
前者を占有移転禁止の仮処分、後者を処分禁止の仮処分といいます。
仮の地位を定める仮処分とは、裁判で争っている間に著しい損害を被るような場合に、仮に本案訴訟で求める権利関係の内容に沿うような法的状態を定める民事保全制度をいいます。
◆仮差押えと仮処分の違い
仮差押えは、「金銭債権」の保全を目的とする一方で、仮処分は、「非金銭債権」の保全を目的としています。
このように、両保全制度の違いは、保全債権の種類にあります。
◆仮差押え・仮処分の要件と流れ
・民事保全の要件は、①被保全債権(権利)と、②仮差押え・仮処分の必要性です。
上述のように、①被保全債権(権利)は、仮差押えの場合は金銭債権、仮処分の場合は非金銭債権である必要があります。
②仮差押えの必要性があるといえるためには、強制執行をすることができなくなるおそれがある、又は、強制執行をするのに著しい困難を生じるおそれがあることが必要となります。
②係争物に関する仮処分の必要性があるといえるためには、権利実行をすることができなくなるおそれがある、又は、権利を実行するのに著しい困難を生じるおそれがあることが必要となります。
②仮の地位を定める仮処分の必要性があるといえるためには、債権者に生じる著しい損害又は、急迫の危険を避けるために必要であることが必要となります。
・仮差押え・仮処分の流れは大きく変わらず、以下のようになります。
1 裁判所に申立て
2 裁判所による審理
3 担保金の支払い
4 仮差押え・仮処分命令
1 裁判所に申立て
申立書や、保全の必要性を裁判所に疎明(一応確からしいと推測できるようにすること)に必要な資料等の提出をすることで、保全の手続が始まります。
2 裁判所による審理
申立書が受理されると期日に審尋(裁判官との面談)が開かれます。互いの主張が行われます。
3 担保金の支払い
審理により、民事保全が認められた場合、担保として保証金の支払いが必要となります。これは、違法・不当な民事保全等によって債務者に損害が生じた場合に損害を賠償するものです。
問題なく手続きが進行すれば、保証金は債権者へ戻ってきます。
担保の額は、民事保全の対象となる財産の価格の2,3割が目安となります。
4 仮差押え・仮処分命令の発令
民事保全の要件を満たしていると裁判所が判断すると、仮差押え・仮処分命令が発令されます。
先に法務局や金融機関等へ通知がなされ、その後に債務者に届きます。これは、先に債務者に届き、財産を処分されることを防ぐために行われます。
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