強制回収
借金をなかなか返済しない相手に対し、強制力をもって債権の回収をしたいと思ったとき、債権者みずからが力尽くで相手に支払いを強制することはできないため、裁判所の手を借りることになります。強制執行手続です。
強制執行にはまず、自分の権利を公的に証明するものが必要となります。それが債務名義と呼ばれるものです。債務名義は、確定判決や仮執行宣言付判決、あるいは仮執行宣言付支払催促といった公の文章のことを指します。
たとえば、債務者を相手取って「これこれの債務を履行せよ」という裁判を提起したならば、そこで確定した勝訴判決が債務名義にあたります。この場合、債権者は自らが所持する判決正本を裁判所の書記官に提出し、そこに執行文を添付してもらいます。
また、公正証書として作成された金銭消費貸借の契約書が債務名義としての要件を満たすケースもあります。公正証書として作成された契約書で、債務者が金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行を受けても異議のないことを承諾する旨が記載されていれば、債務名義としての要件を満たし(民事執行法22条5号)、訴訟を起こすまでもなく強制執行の手続を取ることができます。
こうして行われる金銭債務の強制執行では、債務者の財産を裁判所が差し押さえて売却し、その売却代金から債権者が債権を回収するという手続が基本となります。差押の対象となる債権としては、不動産、動産、債務者が第三者に対して有している金銭債権などが挙げられます。