相続人が未成年の場合
遺産相続において、未成年者が相続人になった場合に、何が問題になるのでしょうか。
この問いは、そもそも法律上未成年者はどのように捉えられているかに関わってきます。
法律上、未成年者が権利・義務の得喪・変更を生じさせるような行為(これを「法律行為」といいます)をするには、法定代理人の同意を得る必要があります(民法5条1項本文)。ここでの法定代理人はさしずめ親権者となります(親権者がいない場合は裁判所に選出された後見人が法定代理人にあたります)。
つまり、親権者の同意を得なければ未成年者は法律行為をすることができない場合がほとんどなのです。
ところで親権者は、子の利益のために漢語及び教育をする権利・義務を負います(民法820条)。
親権者はこの他に子の財産の管理及び子の財産に関する法律行為を代表したり(同法824条本文)、財産の注意義務を負ったりします(同法827条)。
このように、親権者は子の財産、そして法律行為に関して広範な代表権・管理権(それに伴う注意義務)を有しているといえます。
そこで問題となるのが、親権者と子の利益が相反する場合です。民法は親権者と子の利益が相反する場合(いわゆる「利益相反」が生じる場合)、親権者はその子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求する必要があるとしています(同法826条1項)。
利益相反が生じる最たるものが、まさに親権者と未成年者がともに相続人となる場合です。例えば父が死亡し、母と子が法定相続人になった場合に、利益相反が生じる場合と言えるでしょう。被相続人が遺言書を残さない法定相続の場合、共同相続人間で遺産分割協議をすることになります(民法907条1項)。
遺産分割協議も被相続人の財産権の承継をする法律行為ですから、一方で未成年者は法定代理人の同意なくしてできないものの、他方で法定代理人である親権者も利益相反行為をするおそれがあります。そこで特別代理人を選任するよう家庭裁判所に請求する必要が生じるのです。
このように、未成年者が相続人になる場合は、その法定代理人が同じ相続人であるかどうかにより、法定代理人である親権者が改めて特別代理人を立てる必要があるかどうかが決まります。
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